犬の遺伝、よもやま話セミナーレポート(その1) |
レポートする予定の記事が溜まっていますが
来る4/1(日)に開催予定の
「ペットと暮らすヒトの為の心理学」セミナーに
繋がる内容のお話も含まれておりましたので
先に、3/24(土)に開催し無事終了しました
尾形聡子先生による
犬の遺伝よもやま話セミナー
in 自由が丘 Ambiente(アンビエンテ)
のレポートをUPしたいと思います。
テーマ:
「犬の性格と遺伝の関係について」
開催日当日は快晴となり、桜も綺麗に咲いてました。
遠くは名古屋から参加頂いた方もあり、勉強熱心な
皆様が足を運んで下さったことに感謝でした。
最初に参加者の皆様からの簡単な自己紹介。
実にバラエティー豊かな立場の方が集まって下さって
まさに「よもやま話セミナー」らしい会となりました。
それぞれの方がそれぞれの目的意識を持ち、
自己紹介の段階から興味深く
引き込まれるお話もありました。
自己紹介が終わった後、尾形さんのお話は
まず、最新情報の研究論文の紹介から始まりました。
今年の2月に発表されたばかりのイギリスの論文で
「騒音への恐怖は筋骨格系の痛みが原因となっていることがある」
というもので、痛みがある場合、痛みがない犬に比べて
平均して4年ほど遅れて騒音への恐怖が発症するという
体の不調が性格に影響することを示した内容でした。
私の亡き愛犬(JRT)も6才頃からロケット花火の音を
怖がり出したことを思い出し、興味深い内容でした。
このような、最新情報を含むお話が聞けるのも
尾形さんが「犬曰く」のサイトを通じて
世界で行われている研究の最新情報を発信し
随時掲載されているからということもありますので
こういった点もこのセミナーの特徴だと思います。

そして、本題へ。
「氏か育ちか~性格はどのようにして作られる?」
というお話から。
人の場合は、性格は遺伝と環境の影響は半々と言われ、
犬についても同じことが言えるとのことでした。
「気質」と「性格」の違いについて。
どちらが遺伝するでしょう?という質問があり、
正解は・・・・「気質」
どちらも似たように感じがちですが
気質というのは、生まれ持っている性質のことで
遺伝に関係し、それに対して、性格というのは
後から形成されるもので行動の仕方に現れる
その人固有の感情や意思の傾向だそうです。
で、「気質」にはどんなものがあるのか?というと
「元気さ」「臆病さ」「フレンドリーさ」「学習能力」「得意な行動」
等が例として挙げられていました。
研究においての気質の指標となるテストの紹介として
C-BARQが紹介されていました。
(14項目に分類された気質の結果が出る)
私は過去にC-BARQを使ったことがあります。
うちで一時預かりボランティアとして預かっていた
保護犬の気質テストの結果を載せることで
里親希望者さん判断材料になればと思ったからです。
沢山の質問に答えていくとこんな感じの結果が出ます↓
※↑このコは無事里親さんが見つかり譲渡されました。
C-BARQは日本版を麻布大学が提供していましたが、
残念ながら2017年をもって終了してしまった模様。
アメリカではまだ実施されているとのことです。
次に「気質」「外見」「病気」「知能」
といった4つの遺伝系質について。
「性格」は生まれた時から持つ「気質」に家庭環境等の
「環境要因」が影響して作られるということ。
環境要因の例として「病気」や「飼い主の性格・影響」
等を挙げられていました。
特に「飼い主の性格」についての詳しいお話は、
北條美紀先生が講師を務めて下さる、
で、人の心理学のプロの視点から詳しくお話頂けるので
是非、聞いて頂きたいと思います。
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遺伝する系質には「量的形質」と「質的形質」があり
「気質」はどちらに当てはまるのか?というと
「量的形質」であり、連続して現れる(身長等)もの
だそうです。
それに対して「質的形質」は不連続(毛色や血液型等)
のもの。
気質は量的形質ですが、例えばラブラドール達が
あえて教えなくてもレトリーブが上手なのも
遺伝的な気質ゆえ。
また、狩猟犬として働く上で致命的な
「ガンシャイ」←銃の音を怖がる傾向も、
先天性の遺伝的な気質なのだそうです。
こういったもともと持っている「気質」の部分に
環境が影響して「性格」が作られていく
とのことでした。

次に
遺伝+環境+エピジェネティクス→性格(個性)
であることから、
エピジェネティクスについてのお話に入りました。
エピジェネティクスというのは、DNA的には
全く同じだけれども、遺伝子発現に差が生じる現象
のことを言い、例えば「蜂」を例に挙げると
女王蜂は生まれた時から女王蜂なのではなく
生まれた時は他の蜂と同じだけれど、
ローヤルゼリーを食べた蜂だけが、特別に早く
体が大きくて卵が産める「女王蜂」になる。といった、
後から現れる違いのことだそうです。
人でいうと、生活習慣病やガンなどの病気、
性格、体格、食の好みなど、
ほとんどのものは環境と遺伝の両方の影響と、
エピジェネティクスの影響を受けているとのことです。
エピジェネティクスは生物がDNAを変化させずとも
環境に対応できる柔軟性を持たせる為に
備わっている仕組み
だと考えられています。
そのように、後からの影響でも遺伝子発現に
変化が生じるのはエピジェネティクスの仕組みのひとつ
「DNAのメチル化」が制御しているからだそうです。
というわけで、次に「メチル化」についてお話。
DNAのメチル化は、遺伝子発現のスイッチを
ON・OFFするような働きをしています。
なぜなら、遺伝子はいつ、どこで、
どれだけ発現するか(タンパク質をつくるか)を
調整する必要があるからで、
DNAにメチル化の修飾がされれば
遺伝子発現はOFFに、
脱メチル化(修飾が取れる)されれば
スイッチはONになります。
DNAのメチル化状態は、環境に影響されます。
例えばガンの場合、ガンを抑制する働きを持つ
遺伝子のスイッチが何らかの影響でOFFになると
無秩序に細胞が増殖されてしまう状態、すなわち腫瘍が
作られるといったメカニズムが分かっているそうです。
レポート(その2)へ続く