災害時&犬の遺伝セミナーレポート(その2) |
今頃ですが、2018/1/8に吉祥寺で開催致しました
災害時&犬の遺伝セミナー感想レポート(その2)
をUPします。
今回は午後の部の前半に講演頂いた
ドッグライター 尾形聡子さんによる
「犬をより深く知るために欠かせない遺伝の基礎」
のお話。
2017/9/20に池袋あうるすぽっとで開催された
G-PAW presents
のセミナーの中でお話下さった
「犬の遺伝学(基礎編)」と同じ内容を
当初はお話頂く予定だったのですが、
今本先生の講義内容に最新情報も組み込んで
お話頂けることになったので、
尾形先生も昨年9月のセミナーとは異なる内容も
含めてお話頂ける事になりました!
上記のセミナーにも参加しましたが、
とても興味深いお話を聞くことができました。
まず「もしも、遺伝的に心身が健康でないと?」
という点からお話が始まりました。
愛犬自身の福祉問題、死別の時期が早まる可能性、
病気の治療費が嵩むこと、手放す人が増えること
そして、ペット関連の仕事に携わる立場の人達にも
不利益を被る可能性が高まること。
様々なデメリットがあるという点からも、
健康であることは、何より重要視されるべき点だと
冒頭のお話からも改めて感じました。
次に「毛色と病気」についてのお話。
こちらは、カラー写真を用いて
シェットランドシープドッグや
グレートデーンの毛色をモデルケースにして、
毛色が示すことの意味、それに伴う
健康面への影響、問題を抱えるリスクの
可能性などのお話がありました。
次に「遺伝とは?」という今回の講義のメインについてのお話。
「外見」「体質や病気」「気質や性格」「知能」
といった形質が親から子へと伝えられていくこと。
そして、昔学校で誰しもが習ったであろう
遺伝の仕組みや「メンデルの法則」についてのお話。
こちらもすっかり忘れている方の為に、
イラストを用いて丁寧に解説下さいました。
次に「遺伝病」とは?という、今回の参加者の皆様が
一番興味津々な所のお話。
一つ前の遺伝の仕組みが分かっていないと
こちらの内容は理解が難しくなってきますが、
遺伝病とはDNAの突然変異によって
引き起こされるもので、突然変異は病気の
原因にもなり得るが、種が進化していく上でも
必要であり、多様性を生み出すものでもあること。
近親交配は、多様性を失わせると同時に
遺伝病が蔓延しやすくなることに繋がるということ。
遺伝病にも種類があり「メンデル遺伝病」と
「多因子遺伝病」というのがあり、
メンデル遺伝病の方は、発症原因となる遺伝子が
分かっていれば、遺伝子検査をすることで判明し
その中でも
「常染色体優性遺伝」と「常染色体劣性遺伝」、
そして「伴性遺伝(性染色体)」
という3種類があること。
日本で注意が必要とされる遺伝病は
「神経系疾患」「血液系疾患」「眼疾患」であり、
一部PRA(発症すると徐々に視力を失う病気)を除き
ほとんどが常染色体劣性遺伝する遺伝病であること。
また、病気を発症する時期が高齢になってからだと、
病気だと分かっていない若いうちに
子犬を産ませてしまう人がいたり
症状が現れにくいので、気付きにくい病気ほど
蔓延しやすいこと。
そして、遺伝病は純血種だけではなく雑種にも
ほぼ同じように発症するということ。
(雑種が強いというイメージは必ずしも当てはまらない)
などの、とても興味深い内容をお話でした。
次に「ジェネティクスとエピジェネティクス」という
なんとも聞きなれない難しい言葉が出てきました。
ここからはかなり専門的な内容になりましたから、
1時間の時間内でご説明頂くことが難しかったのと、
興味のある人が限られそうなので、
今回のレポートでは省かせて頂きます。
この内容について興味をお持ちの方は、
是非、3/24(土)開催の
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にご参加下さい! お申込みはコチラ
少人数対象で質問しやすく、詳しくお話して頂けます!
要点だけ記しておきますと、
「気質の形成には遺伝子とエピジェネティクスと環境が影響する」
ということです。
最後に最も重要なお話である、
「遺伝病をなくしていくためには」
この点は誰しも知っておかなければなりません。
まず遺伝子プールのお話から始まりましたが、
なぜ遺伝病が広まるのか?というと、
それには3つの要因があって
1 繁殖に多用されるオス犬の存在(←チャンピオン犬など)
2 インブリーディング(血縁関係が近い、近親交配のこと)
3 集団数/個体数の少なさ
が上げられるそうです。
その理由についても述べて頂きましたが、
時間が迫って駆け足になってしまいました。
大事なのは、その犬種の持つ特徴を維持させつつも
「遺伝子プールを広げ遺伝的多様性を広めていくことが
犬の心身の健康度を高めることに繋がり、
そのために、生物学的、遺伝学的知識を取り入れた
繁殖をしていく必要がある」ということでした。
1時間では、とても時間が足りない濃い内容であり、
当日回収しましたアンケートにも
「聞きたいポイントが聞けなかった」
というご意見も頂きましたので、その反省を踏まえ
次回の時にはもっと尾形さんの時間配分を
増やしてお話頂けるようにしようと思いました。
「どんなところにどんな風にして
遺伝的要素が現れるのかを知っておくことで
犬の状態がよりわかるようになり、
犬たちの心身の健康を守ることに繋がります」
資料の一番最後に記載してあったこの文章を読み、
逆を言えば、知ろうとすらしない人だと
犬の心身の健康をないがしろにする可能性も
あり得るということだなと感じました。
知識は財産。純血種を子犬から求める人が
その容姿のみを判断材料とするならば
繁殖者の知識や意識レベルの「違い」は
分からないと思います。
その犬種を心底愛しているからこそ
繁殖に携わる人が殆どだろうとは思いますが、
様々な面から日々勉強し、未来の犬達が
なるべく心身ともに健全でいられるように
上記にあるような知識も取り入れながら、
努力を惜しまぬ誠意のあるブリーダーさんから、
一人でも多くの人が求めるようになれば良いな。
と思いました。
「違い」の分かる一般の人が増え、
純血種を求める際の基準が変わってきたら、
遺伝病に苦しんだり、健康問題を抱えたり
色んな心配をせずに、健康なハッピーライフが
過ごせる犬達とその家族が増えるでしょうし、
ペット関連業の職業の人もコワレモノを扱うような
特別なケアを必要とせず安心してサービスを
提供できるようになるでしょう。
獣医さんも治療ができない類いの
遺伝性疾患よりも、なるべくなら
治療可能な病気と向き合っていく方が
理想的なのではないかなと思います。
確実に予防できる所から行動に移す人が増え、
予防の重要性について考える人が増えたならば、
みんなにとって、ハッピーなサイクルが出来るのでは
ないだろうか・・・なんて考えたりしました。
以上、感想レポートでした。
次は、
災害時&犬の遺伝セミナー感想レポート(その3)
で、午後の部(後半)で今本先生にお話頂いた
「犬の遺伝性疾患2018」についてをUPします。
今回ほど間を空けず、早めにUPしたいと思います・・・なるべく。